飲食店の開業・さらなる発展をお考えの方
飲食店にまつわるトピックスです。
出店編
出店編
1)業態の決定
まずは、業態の選定です。
飲食店といっても様々です。
喫茶店、レストラン、居酒屋、バー、寿司屋、料理屋、そば屋、ラーメン屋などなど。
もっと広げれば、
弁当屋、パン屋、宅配ピザ屋なども入ってくるでしょう。
もちろん、自分の得意なもの、やりたいものをやればいいのですが、業態によって営業時間帯や出店対象地域も違いますので、自分の生活環境も考慮する必要があるでしょう。
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店のコンセプト
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ターゲット顧客層
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業時間帯、営業日
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店名
などは、熟考を重ねてください。
また、フランチャイズ店に加入する。という選択肢もあります。
自前で店を出すよりも、加盟料やロイヤリティー等の余計な経費がかかってきますが、
フランチャイズ本部には様々なノウハウがありますので、何をどうやってよいか分からない。という方には、
出店・営業上の間違いを抑えるという点でもリスクの軽減になります。
フランチャイズ本部によっては出店場所の紹介からしてくれるところもあります。
ただ、フランチャイズ本部もピンキリなので、選定には充分な注意が必要です。
2)出店場所の選定
よい物件が見つかったからお店を開こう。という方や、自前の物件で店を開こうという方は別として、
一番の難関は出店場所の選定です。
物件を探して買うか、借りるかのどちらかになると思いますが、ほとんどの方は借りることになると思いますので、それを前提にお話します。
最初に断っておきますが、100%満足できる立地での出店場所を借りられるほど、世の中甘くはありません。
本当に良い物件は、滅多に外に出てきません。
良い物件の情報は専門業者間を流れて、有力な店舗を運営している会社に行ってしまいます。
これからお店を開こうというところには、良い物件はなかなか紹介してもらえないので、
100件物件を紹介してもらっても、1件もめぼしい物件がない。
何てことにもなりかねません。
よく言われますが、不動産屋さんは良い物件は店先に貼り出さない。ということもあります。
何とか、めぼしい物件を探し当てても、良い物件はみんなが狙っているので、
そこで競争が起こり、結果的に力のある会社や、魅力的な店が契約を結んでしまいます。
大家さんの立場からすれば、これからはじめるうまくいくか分からないお店に貸すより、
実績のあるお店に貸したほうが安心だからです。
それくらい良い物件を探すのは難しいのです。
ですので、100%を探すことはあまりオススメしません。
いつになったらお店が出来るかわかりません。ある程度の妥協点は見つけたほうがいいでしょう。
あせる必要はありませんが、1日早くお店が出来れば、1日早く売上があがるということも頭に入れてください。
誰にでもできる効果的な物件の見つけ方は、出店したい地域の不動産屋さんをこまめに回る方法、
自分で歩いてみて、空きテナントがあったら、管理会社か大家に直接電話してみるという方法です。
なんだ、そんなことか。と思われるかも知れませんが、何かコネがない限り、これがいちばんです。
~物件の選定には、以下の点を検討します。~
3)立地選別
自分のやろうとしている店は、どの場所に合うのか。
- 駅前、繁華街
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長所:不特定多数の来店と、平日・休日いずれも来店が見込める。
短所:賃料が高い、既存競合店も多く、新規競合店の出店リスクもある。 - オフィス街
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長所:サラリーマンやOL客が見込める。
短所:週末(金曜日)の集客以外は弱い。(売上を上げられる時間と曜日が限られる。) - ロードサイド
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長所:賃料が安い、競合が少ない。
短所:業態が限られる。 - 住宅街
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長所:賃料が安い、競合が少ない、常連客がつきやすい。
短所:出店に制約がある場合も。 - ショッピングセンターのテナント
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長所:大きな集客が見込める。
短所:出店審査が厳しい。
4)立地調査
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周辺人口調査
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就業者調査
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家計調査
などを資料を入手して行います。
通行量調査
通行料を調べて来店客数を予測します。
可能であれば、出来る限り全曜日、全時間帯するのがいいのでしょうが、なかなか難しいと思います。
一番集客が見込めると思われる日と、集客が望めない日に時間を絞って行なっても効果はあります。
気をつけていただきたいのですが、全く同じ場所でも業態が違えば来店客数も全く違ってきます。
意識するところは、ターゲットとする客層がどれくらいいるか?ということです。
また、実際問題として、この調査に時間を掛けている余裕はありません。
対象の物件が良い物件であるほど、
早く契約しないと他に持っていかれてしまう可能性が高くなります。
限られた期間で、可能な限りの情報を集めることに注力してください。
競合店の状況
周りにどんな店が、何店くらいあるのかを調べ、実際にいくつかの店に客として出向き、集客状況と価格設定を把握します。
5)物件調査
対象物件について、工事に制限はないか、 水周り、 空調、 電源、 看板の出し方 などを確認したほうが良いでしょう。路面店か2階以上(または地下)かも重要な要素です。
業態によっては路面店でないとほとんど集客が見込めない。同じ店をやっても路面店と2階では集客が倍違う。
なんていうこともあります。
もちろん賃料も路面店のほうが高くなります。
~契約条件について~
- 契約期間
- 最近は3年が多いかもしれません。契約更新時に更新料(賃料の1月分)を支払うパターンがほとんどです。
- 保証金
- 賃料の6ヶ月分くらいから、高いところになると数十ヶ月分のところまであります。解約時には20%消却して返還という場合が多いです。
- 賃料
- 毎月の固定費になる、一番重要な部分です。最初にある程度の賃料交渉も試みましょう。
個人的な意見としては、土地勘のある場所のほうが、ターゲットを絞ったり来店動機などを仮定するのに有利ですし、開店後の営業もしやすいと思います。
また、自宅より遠いのは考えものです。
出来れば通勤時間は30分前後にしたいものです。
などを資料を入手して行います。
6)事業計画の作成
お店をやるには、儲けなくてはなりません。
- 日々の生活資金(給料)を取り
- 投資した資金を回収しつつ(だいたい、投資の回収は3年から5年で行うのが目安とされます。)
- 次の投資(改装や2店目の出店)の資金を貯めていくのです。
結構大変です。
飲食店の一般的な収益モデルは、粗利70%、最終利益10%といわれています。
1)の給料は粗利の中から取りますが、最終利益の10%から2)投資の回収と3)次の投資資金の留保をしなくてはいけません。
どんぶり勘定では、なかなか難しいのです。
そのために、事業計画を作成します。
まずいくらの利益をあげていかなければならないか(目標利益)を考えます。
目標利益が決まったら、それに毎月かかる経費(自分の給料も含めて)を足します。
その合計額を[1-原価率]で割ったものが目標売上となります。
売上=来店客数×客単価となりますので、目標売上を達成するための席数、回転率、メニュー単価などを設定します。
業態によって、客単価で稼ぐのか?回転数(来店者数)で稼ぐのかは変わってきますので、充分に検討してください。
7)資金の確保
開業資金の最低半分は自己資金で賄うことを目標にしてください。
逆に言いますと、それくらいの資金準備が出来てから開業すべきです。
過度に借入に頼ろうとしますと、金融機関からの信用も得られませんし、返済が資金繰りを圧迫して、後々辛くなります。
また、借入をする場合も、金融機関に行く前に身内や知人から借りられないかを検討したほうがいいと思います。
人から借りるのはイヤだ。という方もいるかもしれません。また、この考え方を否定する人もいます。 ですが、きちんと返せばいいのです。身内や知人に借りた金は返さなくてもいい。と考えるから知り合いから金を借りることが罪悪のようになるのです。
実際私のクライアントでも開業資金を身内や知人から借りた。または出資してもらった。という方は多いです。 経営者の資質として、金を借りられるくらいの信用を人から得ている。ということも必要なのかもしれません。
無駄に金融機関に利息を払うくらいなら、身内に利息や配当を払ったほうがいいと思いませんか?それでも資金が足りない場合に、金融機関に行きます。
まずは国民生活金融公庫に行くのが良いでしょう。新たに商売を始める人向けの融資もあります。
8)人員の確保
事業計画に則って、必要人員を確保します。
最初はアルバイトを何人か雇う場合が多いかもしれません。
残念ながら、飲食店は完全な売り手市場です。
今、飲食店の店長さんの最大の悩みは、『人が取れない』ことなのです。
フロムエーに求人広告を何度載せようと、全く問い合わせがない。という話をよく聞きます。
新規出店は、チャンスです。求人広告を載せるのであれば、新規出店であることを大きくアピールしてください。
アルバイトをしたい人たちは序列の出来上がってしまっている既存店より、新規出店を好みます。
また、一度採用した人に長く働いてもらえるような働きやすい店作りと、ステップアップのための仕組みづくりも大切です。
9)メニューの開発
メニューはお店の顔です。充分に検討を重ねていかなくてはなりません。
おいしいのはもちろんのこと、お客様にとって、お値打ち感を持っていただけるメニュー作りをしましょう。
飲食店での食材原価率のスタンダードは30%といわれています。
原価率を30%以内に抑えつつ、お客様がお値打ち感を持っていただけるメニューを作るのは結構大変なことです。 もちろん、近所の競合店との兼ね合いもあります。自店だけ高ければ、高い店という印象をもたれてしまいます。 原価率が高い商品と、原価率の低い商品を織り交ぜつつ、戦略的に魅力あるメニュー作りをして下さい。
10)仕入業者等の選定
仕入業者の選定も必要です。業者によって仕入価格は結構変わってきます。
重いもの、嵩張るものは配達してもらうことになると思います。配達頻度やロットも確認してください。
はじめは、業者と平行して、自分の足で食材を探すのも良いかもしれません。
11)内装工事等
出店で一番お金がかかるのが、内装工事と什器備品の購入です。
工事代金はだいたい、坪当たり80万円くらいはかかります。
こだわりの内装にしようとすれば、すぐに坪100万円以上になってしまいますが、居抜き物件で簡易な化粧直しですめば、比較的安く済むと思います。
厨房設備は20~30坪程度の店で業種にもよりますが新品で200万円~300万円かかります。
限られた面積ですので、できるだけ席数を増やしたい。と思えば厨房面積はなるべく狭く、となってしまいます。 限られたスペースに必要充分な設備をそろえるために、余分な設備は入れないようにしなくてはなりません。
うまくやらないと、結局冷蔵庫が一台余分だった、このスペースに製氷機を入れておけば・・・ なんてことになりかねません。
何が必要で、何が必要でないかをしっかりと検討してください。
厨房設備の購入方法は、以前はメーカーから新品を購入する。が主でしたが、最近はリサイクル品を購入する場合も多いので、 その場合はアフターサービス等がどうなっているか、確認してください。厨房設備は予想以上に壊れます。 また、新品を購入するときはメーカーの担当者が購入品目のアドバイスをしてくれますので、それを参考にすると良いでしょう。
また、資金に余裕がないようでしたら厨房設備はリースにしても良いかもしれません。その場合は事業計画にリース料の支払額を加味します。
設計業者と内装業者の選定も重要です。 自分のイメージに合った設計とデザインが出来るのか?実績はあるか?納期は守れるか?アフターサービスは万全か?
末永く付き合っていけるか。などと、金額以外の判断材料もあります。
12)その他什器備品類
皿やグラス、調理用品等こまごましたものを買い集めなくてはなりません。
東京近郊であれば合羽橋に行かれる方が多いようです。
近所のディスカウント店や、100円ショップにも結構使えるものがあります。
出来るだけ、自分の足でコストを掛けずにそろえたほうが良いでしょう。
13)各種届出等
飲食店を始めるにあたり様々な申請等が必要となります。
許可には日数のかかるものもあります。
それらが完了しないうちは営業が出来ませんのでスケジュールをしっかり立てて対応してください。
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保健所関係
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営業許可申請
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食品衛生管理責任者講習
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警察関係
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深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書(午前0時以降営業する居酒屋など)
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風営法2号営業許可申請書(クラブ・スナック)
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消防関係
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防火対象物使用開始届出書
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防火管理者講習
売上金管理編
1)飲食店の売上金管理
売上金管理は飲食店の運営管理でもっとも基本かつ重要な部分になりますので、どこのお店でも神経を使われていることと思います。
売上のほとんどが現金ではいってくるのは飲食店の大きな特徴ですが、それだけに確実な売上金管理はなかなか難しいものです。
また、お客さんから直接現金をいただく(通帳などに受け取った金額が証拠として残らない。) ことから売上除外などの不正が発生しやすく、税務調査でも特に注意深く調査される項目になります。
2)飲食店の税務調査で狙われるのは
飲食店の税務調査ですが、残念ながら、一般の税務調査より厳しいことが多いのが現状です。
これは飲食店に限らず現金商売を行っている場合にいえることです。
通常税務調査というと2週間位前に調査に入る旨を税務署の担当官から連絡があるのですが、 飲食店では、抜き打ちで調査に来ることも少なくありません。
抜き打ちで調査が行われる場合には、売上除外などの不正が行われている恐れがあるので、隠蔽させるスキを与えさせないと考えられているのでしょう。 実際には社長や店長が不明瞭な現金の持ち出しをしたり、売上伝票の除外をし
ていないかということを現場の従業員に聞き込みをすることもあります。
ある社長さんから伺った話ですが、調査官が社長の自宅にあらわれ、奥さんに 『ご主人が夜何か荷物を持って帰宅されることはありませんか?』 と聞かれたそうです。 たぶん売上金を自宅に持って帰っているのではないかと疑ったのだと思いますが、(もちろんそんなことは一切ありませんでしたが。)
それくらい飲食店の現金管理については税務署にも狙われるポイントになっています。
3)現金管理方法はどうするか
飲食店の税務調査ですが、残念ながら、一般の税務調査より厳しいことが多いのが現状です。
- 売上金
- 仕入・経費の支払い用現金(小口現金)
- つり銭
ということになります。
まずいのは、これらをすべてレジの中にごちゃ混ぜにして、支払いなどもレジの中の売上金から支払いをしたりすることです。
これをやってしまうと現金の性格上の分類もできませんし、現金差異が出たときの原因も把握できなくなります。
また、日々の売り上げの検証もジャーナルに頼るだけになり、検証性も弱くなります。
私がおススメするのは、
- 売上金は毎日の営業が終わったら、そのまま封筒に入れて封をしてしまう。(1日分の売上金に1封筒)
- 売上入金用の預金口座を作り、その口座に日ごとに売上金を入金する。
- 支払い用の現金を入れておく金庫を用意する。(手提げ金庫程度でOK)
- 上記をすることにより、毎日営業前にはレジの中には決められた額のつり銭のみが入っていることになるので、つり銭の金額をチェックする。
こうすることにより現金の性格別の分類ができます。
また、これくらいの管理をしておくと、税務調査が入ったときにも日々の売上表と預金通帳の入金状況を比較することにより検証が可能となりますので、調査官にも現金管理については『この会社はきちんとやっているな』と好印象を与えることができます。
なお、預金通帳への入金頻度ですが、もちろん毎日入金に行くのがベストですが、毎日はなかなか難しいという場合にも目安として、 社長さんの給料以上はお店に残さないように入金に行くようにしたほうがいいと思います。
お店に現金を残しておくことは相応のリスクがあります。
空き巣が入るかもしれませんし、従業員が売上金を着服することも絶対無いとは言い切れません。
いやな話ですが、私も何度もそういった話に何度も遭遇しました。
社長さんの給料分とは、事故があったときにも最悪社長さんが給料を取らなければ補填できるという意味です。少々厳しいですが…
4)経理処理はどうするか
経理処理についてお話します。
会計ソフトを使う場合は勘定科目を
- 売上金
- 小口現金
- つり銭
の3つ作ることをお勧めします。
現金勘定1つだと残高あわせが面倒になりますので。
日々の帳簿入力は3)は通常残高が変わることはありませんので、そのまま。
2)は出金状況をそのまま入力。
1)については、いくつか方法があります。
その方法とは……
a)毎日 売上金○○/売上高○○ と入力し、
通帳入金時に 預金○○/売上金○○ と入力する方法。
これが一番実際のお金の流れに沿った方法です。が処理件数が多くなります。
b)通帳入金時に 預金○○/売上高○○ と入力する方法。
a)の方法を簡略化した方法です。
処理件数は少なくなりますが、月末や期末に通帳入金できなかった分については、
売上金○○/売上高○○ という処理が必要になります。
c)通帳入金時に 預金○○/売上金○○ と入力し、
月末に月の売上合計額で 売上金□□/売上高□□ と入力する方法。
私はこれでやることが多いです。月中の売上金残高がマイナスになるので気持ち悪いと思われる方もいるかもしれませんが、月末には残高が合います。
また、売上をひと月分まとめて計上しても特に問題はありません。
このほかにもあるとは思いますが、一番ピンと来る方法で行ってください。
3)現金管理方法はどうするか
最後になりますが、毎日の伝票および集計ジャーナル、手書きの領収書を発行している場合はその控えはきちんと整理して保管しておいてください。
保管期間は最低7年です。
保管場所に困ると思いますが、こればかりは法律で決められておりますので...
もし税務調査が入った場合、不明点があれば原始帳票であるこれらの資料を確認されることがあります。 また、領収書などを発行したお客さんに税務調査が入った時にも税務署から『株式会社○○さんの調査に入っています。○月○日に利用されて、領収書を発行し ていると思いますが、領収書の控えを提出してください。』なんて言われることもあります。(これを反面調査といいます。) いずれにせよ、税務署に請求されたときに出せるよう、きちんと保管をお願いします。