前回の続き(上場株式等の売却計算での事例)
前回の続きです。
こちらは上場株式の売却益の計算方法についてです。
———- 前 提 ———-
例えば、100円で買った株が200円に上ったので売却したとします。
(※経費はないものとします)
そうすると、
200円-100円=100円
という計算で、100円の儲けに対して税金がかかります。
ところが、この株が、会社が倒産して紙切れになってしまった場合はどうなるのか?
平成17年4月以前は、税金の計算上は何ら考慮されませんでした。
つまり、同じ年に紙切れになって損をした銘柄と上記のように儲かった銘柄があったとしても、儲かった銘柄の計算しか税金の計算には入ってこないということです。
平成17年の税制改正により、特定口座で保管の委託していた上場株式等であれば、特定管理口座へ移管することにより、0円で売却したと見做して、購入した金額分が経費として認められることとなりました。
————— ここまでが前提です。 —————
今回は国税不服審判所での裁決事例です。
(※税務署の処分が納得いかない場合、異議申立て(税務署宛)→審査請求(国税不服審判所)→裁判所(地裁)→・・・と進んでいきます)
請求人は、特定口座と一般口座で上場株式等の取引を行なっていました。
この方の一般口座内で管理していた株式が上場廃止となり、紙切れになってしまったが、この株式の損失(無価値化)については税金の計算上(株式等の譲渡所得)経費として認められなかったため、国税不服審判所へ審査請求した事案です。
この方も、前回の競馬事件の方と同様に、平成21年中の株式取引の金額が
「売却額164億円、取得額が162億円で、売却回数2800回、大部分の保有期間が6ヶ月未満・・・」
という短期間で大量かつ多額の株式取引を行なっていたようです。
前回同様、明らかに営利を目的に継続的に投資をしていたため、譲渡所得ではなく、事業所得又は雑所得であると認定され、所得区分が変更されました。
結果として、特定口座ではなく、一般口座内で管理していた株式の価値喪失(紙切れ化)であるにもかかわらず、所得の計算をするときに必要経費に算入できるとされました。
複雑すぎる(曖昧すぎる?)し、どこまでが譲渡所得でどこからが雑所得(又は事業所得)なのかの明確な基準がない以上、価値喪失株については全部必要経費に算入させて欲しいと思います。
そうしても税収に影響ないですし、金融商品の税務なんて毎年変わっているのだから、問題ないように思えます。
担当:内山 雄介