サラリーマンの副業と還付 ~中央区の税理士ブログ~
確定申告の話題の続きです。
よくサラリーマンが副業で赤字になると還付申告ができる云々と書かれていることを目にします。
その中で、たまに?危険なことが書かれているようなので気になることをメモしておきます。
所得税法は会社員の給与など、所得を10種類に分類しています。
すなわち、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得、給与所得、退職所得、
一時所得、雑所得となっております。
ここで、給与所得(必ずプラス)と合算(損益通算といいます)して給与所得を減らすことができるのは、
不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得(※株式等・不動産等の譲渡所得を除きます)の4つだけです。
ただ、恐らく山林所得がある方はほとんどいないので、実質は3つに絞られるものと思います。
では、冒頭で申し上げた危険なこととは何か?
サラリーマンの方が、副業としてアルバイト以外の何らかのお仕事をしたとします。
この仕事が、上記10種類のどれに該当するかという疑問が生じるかもしれません。
一般的には雑所得という分類になると思われます。
そして、この所得が売上よりも経費の方が多い場合、赤字になりますが、
この赤字は他の雑所得(例えば、年金等)とは当然合算(これは同一の所得区分のため、損益通算
とは言いません。)できますが、給与所得とは合算(損益通算)できません。
そうなると、副業で赤字になっても還付申告などできないことになります。
ところで、この副業を事業所得とした場合はどうなるか?
上述した4つの所得の中にあるため、事業所得の赤字は給与所得から差し引くことができます。
ここで、事業所得と雑所得とはどのような基準で区分するのかという疑問が生じます。
ちなみに雑所得の定義は、雑所得以外の所得区分のいずれにも該当しないもの。
という定義とは言えないものなので、事業所得の定義を確認し、これに該当しなければ雑所得という
区分が考えられます。
しかし、事業所得の定義を所得税法から引っ張っても、スッキリした基準はありません。
農業・林業・漁業・鉱業・・・と例示列挙してあるだけです。
ただ、最後に「対価を得て継続的に行う事業」と記載されています。
実務的には、昭和56年の最高裁判決の基準が使われています。
「自己の計算と危険において、営利を目的として対価を得て継続的に行う経済活動」
さらに、国税不服審判所の採決では以下のようなものもあります。
「一般に所得税法にいう事業所得とは、自己の計算と危険において独立して行う業務から生ずる所得
であると解され、営利性・有償性、独立性、自己の危険と計算による企画遂行性、精神的・肉体的労力
の程度、人的・物的設備の有無及び客観的な社会的地位などの諸要素を総合して、社会通念上事業
といい得るか否かによって判断する・・」
なんだか難しいですね。。。
結局、社会的にみて事業としての客観性がないと雑所得と考えて良いということになります。
そうなると、サラリーマンが事業(副業)で生じた損を給与を合算することはそれなりのハードルがある
と思いますし、そもそも還付税額と副業で生じた損の釣り合いがとれるのかという問題があります。
担当:内山 雄介